プロジェクトのはじまり |
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この地で四代続く、江戸染め物工房の再生としてプロジェクトはスタート。
収支面より、土地を最大限に活かすため染め物工房+賃貸集合住宅として計画。 |
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計画地周辺 - 落合 |
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かつては、この地に流れる妙正寺川の水を利用するため染色に関わる業者が軒を連ねていました。今では和服の愛好者が少なくなり、染め物業者も数える程度になってしまいました。また現在の妙正寺川は水量減少と大雨時の水害対策のコンクリート擁壁により当時の面影は残念ながら残っていません。唯一、堰を越える水の音だけが残された当時の川の記憶である様に思われます。
計画地は、北側を妙正寺川、南側が公道に接し、道路から川に向って広がる不整形な形状です。 |
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染め物工房 |
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この染め物工房は、様々な機能があります。
- 反物を製作する工房としての製造機能
- 反物を見て頂き商談する場としての販売機能
- 伝統的な江戸の染めを見学できるミニ博物館、染めを体験出来る教室としての,学習機能
- 施設の顔、また、これからの「染」の可能性を発信する場(ギャラリー・カフェ)としての広報機能
工房の構成は、人を迎えるための屋外空間を中心に配し、ここに妙正寺川の流れを意識した水の流れ「せせらぎ」をつくりました。この空間をギャラリー・カフェスペースのある棟と工房機能がある棟で囲む構成となっています。
来訪者は枝垂れ柳を右に見て、いぶし銀調タイルの柱、松羽目板の天井に囲われたピロティを進み、建物内のガラス向うの江戸から変わらぬ染めの作業場を見ながら奥へと進んでゆきます。
右へ向うと「せせらぎ」に沿って建つギャラリー・カフェの棟に向います。
左に向うと路地を抜けてミニ博物館としての見学路となり、妙正寺川沿いに桜を植樹した通路に出ます。カラカラ鳴る川の音を耳にしながら窓を覗くと職人さんの仕事風景が見学できます。
そのまま桜並木の通路を進み、ガラス扉を開けると染色教室に入ります。
また路地にある打放しの吹抜け階段を上ると商談スペースとしての着物会場となります。ここからは、足下のスリットガラスから「せせらぎ」が眺められる仕掛けとなっています。 |
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集合住宅 |
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集合住宅の構成は、賃貸住宅25戸と施主住宅1戸。
賃貸住宅は、26〜27uのゆとりのあるワンルームタイプとしました。
アプローチではヒメシャラが立ち、木製ルーバーの庇の下、縦格子の扉を抜けるとセキュリティースペースを隔てるウォールナットの自動ドアがあります。
エントランスホールに入ると左下からスリットより自然光、右上からは間接照明によって光がもたらされる空間になっています。
仕上は時代を経ても素材感が失われない様に、壁面を杉板打放し、床が錆石ビシャンたたきとしました。
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完成、その後 |
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この建物は完成したらそれで終わりではなく、エイジングにより味を深めると共にその後も成長してほしいと思いました。そのため、この施設には様々な余白部分をつくりました。
この部分を創意工夫し新たな機能を持たせることで建物が完成後も成長を続けてゆくものと考えております。
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