20年前、阿佐ヶ谷で寿司店を営みたいと内装設計を依頼されたオーナー様が体調を崩され、一旦お店を閉めて故郷へ戻られましたが、今回「人生最後の再出発」にと、
阿佐ヶ谷で再度寿司店を開業したいとのお話しをいただきました。
お話しがあってから多種多様な物件を1年以上かけて探しまわり、コレと言う物件に巡り会わずに諦めかけていた時に、以前のお店の真下である1階路面店(旧店舗:貴金属店)に空きが出たとのことで、お知らせ頂いた当日に気付けば物件を押えていました。
以前のお店の真下で開業することになり、内装は以前と同じテイストなのか、まったく
別のコンゼプトなのか迷っている時に、オーナー様から「今度は一人でお客様に目配り出来る最小限の人数が入れるお店」を希望されているとお聞きしました。 また、裏厨房もカウンター内も最小限のコンパクトなもので良いとのご要望でしたので面積的に大きな余白が出来ることになり、この余白を思い切って店舗に入る前の踏込み空間に全て使うことにしました。この踏込みの余白空間が、お客様にとってはお店に入る前の軽い心の準備空間、オーナー様にとっては仕事とプライベートのスイッチ空間となりました。
また将来、お店の拡張余白空間としても機能するように諸設備も用意してあり、江戸時代の屋台寿司を復活させたいとオーナー様自らも奮起するきっかけとなる空間になっています。店舗内部は寿司屋らしからぬ、和風洋風というジャンルの枠にハマらない仕上材料を組合せ、寿司屋の象徴である白木のツケ台のみが辛うじて寿司屋であることを主張しています。
最後にお店を充分に堪能したい人は、予約の際に食事を楽しみながら包丁さばきを目前で凝視できる席を希望することを書き添えておきます。
(設計担当:副所長 片桐由弘)
|